もしもピアノが弾けたなら
と、不器用な男の切ない恋心を歌ったのは西田敏行であったが、
今回は、「だったら練習すればいいではないか」という心境になったという話である。
はじめに
冒頭の西田敏行の曲の歌詞は以下のようである。
もしもピアノが弾けたなら
思いのすべてを歌にして
君に伝えることだろう
雨が降る日は雨のよに
風吹く夜には風のよに
晴れた朝には晴れやかに
だけど僕にはピアノがない
君に聴かせる腕もない
心はいつでも半開き
伝える言葉が残される
アアアーアア
............残される
1981年の作品ということだからリアルタイムではないのだが、自分にとってなんとなくピアノと言ったら思い出す曲であることに気づく。同時に歌詞の印象からであろうか、ピアノというのは誰もが弾けるものではないのだという先入観は、思えばこれから来ているのではなかっただろうかと思ったりする。
今に至るまで、ピアノへのかすかな憧れと、それでいて住む世界が違うものといったある種の縁遠さを感じながら年を重ねてきたのであるが、思いがけずそれが身近なものとなり、今更新しい趣味の扉を開ける羽目になったので、本日はその顛末を記そうと思う。
きっかけ
きっかけは、意外なことでも何でもないのだが、保育園に通う愛娘がピアノを弾きたいと言い出したことである。
タイミングよくクリスマスという後押しがあり、間もなく我が家に保育園児にはやや贅沢なキーボードがやってきた。
そしてそれは、多少予測できたことだが、今のところ娘の興味は引いていないようである・・・
しかし、当然話はそこでは終わらない。
娘のためのキーボードだが、いじってみるとなかなか面白い。バンドの真似事をしていた自分にはコードの知識だけはあるので、ギターを引っ張り出すのは億劫だが、そこにあるものを鳴らす分には気楽だ。そうして、コード弾きだけじゃなく、メロディも奏でたいという欲求が出てきた。
もう一つ。娘がピアノを弾くというのは男親にとっての憧れだ。
今は興味を示さなくとも、いつかその時が来た時に、自分が教えられるレベルになっていたら、その夢に一歩近づくことができるのではないか。また親の株も爆上げというものである。
それなら、基礎から勉強しておくのが得策だというわけである。
最悪でも、自分が弾ければこの高価なおもちゃが無駄になることもない・・。
そうした経緯から、ピアノは私の新しい趣味となった。
ピアノと書いたのは、キーボードを買い与えた娘のために、自分は電子ピアノを買う羽目になったからであり、間違いではない。
私は単身赴任をしているので、家のキーボードは使えない(逆に単身赴任先の住まいでコソ練ができる)。このため、どうしても練習用の「鍵盤」は必要だった。ただせいぜい安いキーボード、なんなら鍵盤だけあればよかろうと、最初は思っていた。
ところがそうはヨドバシカメラの問屋が卸さなかったのである。
大人(初心者)のピアノ選び
選定基準
まず、全くの初心者で、漠然と「ピアノ」に興味がある、少し前の自分と同程度のレベルの諸兄を頭に思い浮かべつつ書くと、キーボードとピアノは別物だということをまず指摘しなければならない。
黒と白の鍵盤が並んでいるものがみなピアノなわけではないのだ。
細かいことは省くが、ピアノをやりたい、やらせたいなら、ピアノを買わないといけないのだ。省きすぎると伝わらないので大事な点を一つだけ書くと、鍵盤を押した感じと音の出方が両者は全然違うから、キーボードが弾けてもピアノが弾けるようになるとは限らない。少なくとも苦労する。
そうはいっても初心者だ。ピアノというのは高価なので、本物のピアノ(電気コードでつながっていないやつ)をいきなり買うわけにはいかない。
こうした点を総合考慮すると、選ぶべきは電子ピアノ、そしてわたくしと同じような大人かつ初心者が選ぶべきモデルというのは、調べに調べた結果、2つしかないことが分かった。
ところで、コロナ禍でピアノの売り上げが伸びているという。「おうち時間」なるものが増え、人々が手に入れた自由時間を生かすべく新たな趣味を探しているのだというが、本当だろうか。
ともあれ、初心者の私がこれから書き記そうとする「初心者向けピアノの選び方」など誰が見るかということだが、おそらく同じ悩みをもち逡巡する人々が世の中に増えている可能性はあるということだから、参考になる人もいるであろうということで意を強くしたいと思う。
私の選んだ基準(初心者だということを考慮しつつ、おそらく、いくら初心者でも妥協しないほうがいい基準)は以下のとおりである。
- 高額でない
本物は論外として、必然的に「電子ピアノ」と呼ばれるものをチョイスすることになるが、その中でも、できる限り安いほうが分相応というものである。
万が一挫折した時のダメージを最小限にとどめる必要もある。
- ピアノである
最も重視したのが、鍵盤の感じがピアノと同じであること。ピアノは、鍵盤をたたくと、連動したハンマーが弦を打って音を出す。だから、叩いていないときは音が出ない。一方キーボードは鍵盤を「押した」ときに音を出す。おのずと鍵盤のタッチの仕方が代わってくる。これが別物たる所以であるので、「自分はピアノではなくキーボードをやるのだ」という奇特な人は別として、この「打鍵感」が最も大事だと思う。
また、「ピアノであること」は他にもいろいろあり、初心者が語るべきかどうか迷うことろにあるのが本物と同じ「88鍵」を揃えるものであること、というのがあるので一応入れておく。中には少ないものがありサイズ(横幅)が抑えられて魅力的だが、弾けない曲が出てくるという。
- できるだけ小さいものである
これは特に自分の事情だが、部屋が狭くなるのは困る。よって、既存のテーブルに置けるタイプのものにこだわった。
もちろん、鍵盤が小さくなっては練習にならない、ということは、奥行きと高さに関する問題だということになる。
なお、テーブルにおけるタイプでも、別売りで専用台を買うことはできるので、必要なら買えばいい。
候補は2モデルしかない
大人と言わずとも「初心者が最初に買うべきピアノは何か」というのは昔からあるテーマのようで、ネット上には多くの情報があふれている。しかし、それらを総合すれば、今日ではおおむね以下の2モデルに集約されるようである。
価格コムの人気順でも1,2を争う両者であることもそれを裏付けている。
身もふたもないが、このうちどちらを選ぶのかというのは、結局は好みなのである。
CASIO Privia PX-S1000
まずはカシオ。スイッチの類もタッチ式であるなど無駄がなくとにかくスタイリッシュである。発売時期も次のヤマハに比べると新しい。
カシオ(CASIO) Privia PX-S1000BK(ブラック) 88鍵盤 電子ピアノ デザイン性と高いピアノ性能で人気 Bluetoothスピーカーとして使用可能
- 発売日: 2019/02/15
- メディア: エレクトロニクス
この先生はCASIO推しである
YAMAHA P-125
もう一つの雄、YAMAHA。私はこちらを選んだ。
条件的にはCASIOの方がよいのだが(特にサイズの面で)、結局は好みの問題、なんとなく古臭い感じがよさげに見えたのである。
あとは、全くの偏見であろうが、Casioと言ったら計算機、楽器感のするヤマハの方がいいと思ったのである。クソみたいな理由ですみません。
これからピアノを始めたい人におすすめの電子ピアノ YAMAHA P125
この先生はヤマハ推しである。ピアニストの評価も真っ二つ、くどいようだが要は好みなのだ。
なお両モデルとも6万円前後である。
無知だった自分は意外に高いという印象を正直受けたが、今では「およそピアノを名乗るためには最低ライン」と理解している。
最低ラインと言っても、もちろんなんの不満もないし、チープな感じもない。
(品質に関してのインプレッションはできた身分じゃないので後に譲りたい。)
大人(初心者)のピアノ練習法
独学ということについて
さて、かくして狭いわが単身赴任先の部屋に密かに(娘には内緒にしている)長尺物がやってきたわけであるが、以下その練習方法について記そうと思う。
初心者がはなはだ僭越だが、「変な癖をつけないこと」は大事で、初心者であるうちにそこに気づいたことは意味があると思うので、主にその点をシェアしたい。
すなわち、先に述べたように私はバンドの真似事をやっていたこともありコードの知識がある。ギターに比べ、ピアノのコードは比較的覚えやすいし、指も痛くならない。
コードとは和音(ドミソとか)であるが、初めのころ親指と人差し指と中指だけで鍵盤を叩いていた。3本で抑えられないコードがまれに出てきたら小指のお出ましを願うといった具合である。
少しピアノをやり始めると、ほんの少しの期間このやり方をしただけなのに、変な癖がつき、矯正が大変なのである(もちろん、矯正しないと上達の妨げになる)。
だから、独学でやるというのはできれば避けたほうがいいと思う。
可能であれば私も習ってみたいものだと思うが、さすがにそれは時間とお金が許さない。
だいたい、ど田舎なのでそんな場はない。
(オンラインは魅力的だ)
ピアノ練習アプリという救世主
(オマケ)あると便利グッズ
ヘッドホン
こだわり始めるとキリがないヘッドホン。変換プラグ(太い穴用)が付いてればとりあえず音楽用ってことで。
ちなみに上のYAMAHAは、ヘッドホンジャックが2個あり、連弾が可能だ。使わんけど。
カメラアダプタ&変換ケーブル
セットで揃える。変換ケーブルから出力したものをカメラアダプタを介してiPhoneに繋ぐ。
これにより、アプリでの「正しく演奏できているか」のチェックの精度が上がる。
これがないと、チェックはピアノの生音をiPhoneのマイクで拾うことになるので、ある程度の音量をキープする必要がある。
これでは夜中の練習は厳しい。
上の3点セットで、いつでも気兼ねなく快適に練習し放題。
おわりに
習い事、新しい趣味、とりわけ楽器というのは、「始めるなら早い方がいいもの」の代表として語られがちだ。指が固く覚えが悪い大人が…というわけだ。
まして、「昔取った杵柄」ですらない、完全に初めて触れるものなら尚更というもの。
しかし、今回の経験は、時代は変わって、これらのハードルは劇的に下がったのだということを痛感させるものとなった。
ピアノがこれだけ安くコンパクトになり、オンライン講座からアプリまで用意されているのだから。