親父の小言とボディーブロー

人生折り返しの子育て世代。世知辛い世の中を面白く生きるためのあれこれと雑記

暖かさとは何か

東北は寒い冬の真っただ中です。

 

とりわけ北東北の内陸部にある我が町は雪も多く最低気温がマイナス2桁台ということも珍しくありません。

 

そこで、文字通り「死活問題」である家の暖房について考えてみた結果がなかなかに興味深いことになったので、シェアしてみたいと思います。

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概要としては、薪ストーブはかなり魅力的な存在で、金がかかるといわれているが、そうでもない。というものになります。長いですがご笑覧ください。

 

暖房に何を求めるか

そもそも自分が薪ストーブに興味が向いたのはなぜなのか?というのを分析してみました。暖房に何を求めるか?を考えた結果ですが、私の場合は、突き詰めると以下のようです。

 

(1)暖かさ

 言わずもがなですが、暖かさ。しかし、寒冷地に住む、住んだことがある方であれば、スペックこそが重要で、外の冷気を別世界のものにする高出力すなわち「確かな熱量」が必要であるということはご理解いただけるでしょう。

 こうした観点から、電気ストーブや熱源を問わず小型のストーブなどはそもそも眼中にないことになります。それはチワワがライオンに勝負を挑むようもので、どんなに頑張っても無理なもの、抗えないものがこの世にはあるのです。寒さとはそういうものです。

 

(2)やすらぎ

 暖かいということは単に気温が適温であることを意味するのではありません。せっかくなら家族で暖かさを囲み、外の冬の寒さと景色を、つまり冬を楽しめるような暖房がいいに決まっています。

 

この意味で弱いのがエアコンやファンヒーターで、それらは高性能のものを買えば確かに暖かいのですが、決してやすらぎはもたらさない。機械が絶えず発する送風音しかり、無機質なたたずまいなど、逆に人を遠ざけているような気すらしてきます。

www.kome100.com

そうした理由から石油ストーブを買った時の記事です

 

(3)安心感

 命を守る生活の必需品としての「確かさ」、すなわち故障がなく、災害に強いことも重要です。そうなるとやはり強いのはアナログです。

世の中はデジタルこそ正義、住宅の暖房も、住宅を高気密化して省エネのエアコンで賄う方向に誘導されているように見えますが、身近で震災をみてきた身には、真冬に故障したら?停電したら?と考えると、よくそんなものに身を預けられるなと思わなくもありません。おまけに高気密化したおかげでシックハウス症候群とか、それを予防するために強制換気で結果冷気を入れるとか意味が分かりません。ともあれ他者にすべてをゆだね命を預けるのではなく、危機に際して自分の努力でなんとかなる部分があることは大きな安心につながります。

 

薪ストーブがものすごく魅力的に思える

上記の基準をかなり満足させそうなのは、数ある暖房器具の中でも「薪ストーブ」であると思います。

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「暖かさ」に関して。

コスト(同じ室温にするのにいくらかかるのか)を考慮しなければ、電気だろうがガスだろうが薪だろうが、等しく部屋を暖められる=温度は上げられることにはなります。

が、その暖まり方が違います。

すなわち熱風(温風)を電気の力で作り出し循環させることによって熱を得るエアコンやファンヒーターと違って、薪ストーブやいわゆる昔ながらの石油ストーブは、暖められた物体(ストーブ本体)から放出された赤外線が暖かさの源です。そのため、消せばすぐに室温が下がり寒さを感じるエアコンなどと違い、暖かさが長時間続き、身体も芯から温まります。

 

「やすらぎ」に関して。

これは、炎の力によるものでしょう。炎に引き寄せられるというのは人間が本来持っている本能だそうですが、炎を眺めているとそれだけで癒し、やすらぎが得られ、自然と人が集まります。

不安定な世界の中での昨今の焚火ブームも頷けるというものです。また最近はコミュニケーションを促進するために焚火をミーティングに導入するなどという話もありますね。おそらく、火には人をリラックスさせる力があるのでしょう。

加えて私の場合は幼少期を過ごした実家に薪ストーブがあり、そうしたセンチメントも影響しているのだろうと思います。

 

「安心感」に関して。

薪ストーブは原理、構造がシンプルです。各メーカーでいろいろな薪ストーブを販売していますが、薪を燃やして煙突から排気するという単純な仕組みは変わりません。多少叩いても雑に扱っても、電子部品ではなく鋳物だの鉄板だのによる大雑把な部品で構成されていますから致命的に壊れるということがありません。

また完全アナログで部品点数も極めて少なく、したがって修理や応急対応が可能です。

電気やガス、灯油の供給が災害で寸断されても、燃やすものさえあれば暖がとれるのです。

 

思えば震災のときにはあちこちで廃材をドラム缶で焼いて暖を取る光景をみたものです。また被害を受けなくても停電は起きたので、薪ストーブのある家に近所の人が集まったなどという話もありました。 

 

高気密高断熱、オール電化、スマホでピッと・・それは快適で夢のような話かもしれないけれども、実に脆いものなのです。人の記憶は5年とか言いますが、震災10年、脆さに頼る世の中、実に複雑な思いがします。

 

薪ストーブは高いのか

さて、そうはいっても薪ストーブは金がかかるのでとても導入できないではないか?

 

私もそう思っていましたが、必ずしもそうではないようです。ようやく本題です。

 

といいつつさらに前置きが長くなりますが、ここで金がかかるといわれる理由を整理してみましょう。

(1)導入時に金がかかる

  これは事実です。

  大まかに言って本体40万円、煙突40万円、工事30万円。個々のコストを下げることは不可能ではないものの、概ねここはイニシャルコストとして最低100万円かかるというのは避けられない現実のようです。

 

(2)メンテにも金がかかる

  多くの薪ストーブ(今更ですが、ホームセンターで売っているものとか、アウトドア用のペラペラなものではなく、薪ストーブ屋さんで売っているものです)の耐用年数は10年程度ということで、構造上実際にはそんな短期間で壊れることはないでしょうが、案外短いです。かつ、炉の密閉性を高めるための部品など消耗品があったり、煙突掃除の必要があったり、いちいち金がかかります。石油ファンヒーターをその都度買い替えてもいいレベルでかかります。

 

(3)薪の調達に金がかかる

  これも事実なのですが、実は冒頭に述べた興味深い事実というのがこれですので、現実と併せて述べてみます。あくまで理論上ということですのでご理解ください。

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  まず薪ストーブを導入し、薪をすべて購入で賄うとした場合の費用(薪代)は、北東北で考えるとだいたい13万円くらいになるようです。

ライフスタイル的に、夜間と週末利用、だいたい12月から3月までの4か月、120日間使用すると想定してのものです。

  

  以下、根拠をメモしますと

  ひと冬の薪の使用量の目安は、仙台の薪販売店のサイトを参考にしますと、「夜・週末のみで3㎥、日中から夜まで利用すると6㎥」とあります。 ㎥は、薪の断面の面積の合計です。ちなみに薪の長さは40センチです。

  これを、我が家は北東北ということで、「夜・週末のみ」とはいえ多めにみて5㎥と想定します。

 

 我が家の近くで安価に薪を購入できるところを探してみますと、管轄する森林組合で販売しているのが安そうです。配達料込みで5㎥で125,400円(税込)でした。

 

 ひと冬の暖房費で約13万円!ですが、ここで少しぐっとこらえて灯油代との比較をしてみます。

 

 灯油を使う石油ファンヒーターの燃費についてググってみると、概ね広いリビング用で1時間あたり27円程度というのが多そうです。電気代は問題にならないレベルという見解が多いようですが、合わせて30円で考えてみます。これを、1日8時間稼働させると考えると30円×8時間=240円/日ですから、冬期4か月だと28,800円です。

 

 灯油3万円に対し、薪13万円です。

 

やっぱりお話にならないレベルのように思えますが、一つ考えなければならないのが、薪ストーブは家じゅうを暖められる性能がある(カタログスペックと利用者レビューなどから)が、石油ファンヒーターはせいぜいリビングしか暖められず、極端な話、家じゅうを暖めようとしたら部屋ごとに稼働させなければならないということです。

 

あまり薪に幻想を抱き過ぎ、かつ灯油に不利な要素を上げるのもフェアではありませんから、石油ファンヒーターの暖房能力を薪ストーブの1/3だとしても、灯油代は3万円×3=9万円かかるという見方もできそうです。そうするとその差はぐっと小さくなります。

 

さらに面白いデータがあります。

灯油1Lで発生させる熱量は8771kcalです。

一方、これと同等の熱量を得るのに必要な薪の量は、約2kgだそうです。

 

上の「13万円」の薪の量から、2kgがいくらになるのかを考えてみると、

13万円の薪の量は325束(直径23センチ程度)とのことなので、一束当たり385円、重さが7~8kgだそうなので、8kgとすると2kgなら1/4ですからだいたい96円です。

 

つまり、同じように暖めようと思ったら、薪も灯油もコストは同じくらいだということになります。

 

自家調達できない限り薪ストーブは割高というのが世間の常識、私もそう思っていましたが、買っても同じだという結果は衝撃です。

 

もっとも、それだけ薪ストーブがオーバースペックなのだということもいえるかもしれませんが、灯油が、「安いのだが寒さを感じることがある」なら私は寒さを感じない方がいいです。暑すぎるなら窓やドアを開けて雪を見ながら半袖で過ごすほうが幸せではないですか。

エピローグ

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ということで、同じ暖かさを得るのに灯油代も薪代も一緒ということがわかりましたので、では薪ストーブに突っ走ることができるかというとそうではありません。

 

本体のイニシャルコストとランニングコストが高いことと、燃料費としての薪代は、熱量あたりは同じだといっても、ストレートに受け入れがたい額ではあります。相対的には高くなくても、高いは高いのです。

 

そこで、本体のコストと薪代の節約についてどう考えるかを最後に整理してみます。

(1)本体のコストについて

 経済面だけからみると、これを回収しメリットを出すのは難しく、冒頭で述べた理想の暖房像に照らし、十分に答えてくれそうなその価値をどう見るかということに尽きるというのが私のたどり着いた結論です。

 現段階では、その価値は十分にあると思っています。

 

(2)薪代の節約は可能なのかについて

 とはいえ(1)だけではその優れた暖房を維持していくのは現実的には難しいでしょう。いわゆる「理想だけで飛びついて失敗する薪ストーブの失敗例」になるだけです。しかし、この薪代を圧縮できれば、薪ストーブのある豊かな生活を無理なく送ることができるのではないか、経済面でも貢献できるのではないかと思います。

 

 そしてそれは不可能ではないのです。

 

 なにしろ田舎住まいですから、今こそその強みを生かす時です。

 車で2時間弱の生まれ故郷には親が残した山があり、それだけではなくリアル限界集落の当地には管理を止めた雑木林が数多くあります。

 

 そう簡単ではないでしょうが、これらを使って、消費する薪の1/3でも半分でも自家調達できれば燃料の自給自足に近づき、便利さを金で買う危うい生活から少し足を洗えて、大きな安心の得られる豊かな生活に近づけるのではないかと思うのです。

 

 果てしなく長くなりそうなので、続きはまたの機会に譲り、大いなる可能性と散財の予感に、そして北東北の寒さに身を震わせつつ駄文を世に送ります。

 

食料や燃料などで自給自足を少しでも取り入れていくことが安心な、そして豊かな生活につながるのだということに気づかせてくれます。震災後の2013年7月に発売されました。

里山資本主義