大人ダウンジャケット問題に終止符を打ったMooRERについて
今回は、大人の装いのうち、ダウンジャケットについて記事を書きました。
ご笑覧ください。
はじめに
ダウンジャケット。
東北の厳しい冬を乗り来るには必須のものだと、寒さに弱い私などは痛感しているのですが、実にこれが悩ましい存在で、とりわけ大人にとっての選択肢が決して多くなく、そして安い買い物にならないのはご承知のとおり。
前者に関しては、どうしてもダウンジャケットというとモコモコしているうえに余計なロゴが入っていたりと、大人の装いには使いづらい。寒さが堪える大人からダウンを奪わないで欲しいものです。
後者は言わずもがなですが、近年は特に値上がりが著しい。記憶が定かではないものの、定番のカナダグースなどは10年前の2倍近くするのではないでしょうか。
そういったわけで、毎年のように冬が来るたびに悩み、時には失敗してきた大人のダウンジャケット問題ですが、この度とうとう決着をみましたので、ご紹介したいと思います。
大人ダウンとは
私が長年悩み、時に迷走しながら行き着いた大人ダウン像、それを説明するために、いかなる基準で”最後のダウン(たぶん)”を選んだかを述べたいと思います。
1 モコモコ感
基本的に、ダウンの膨らみは暖かさの肝、ダウンの量によるものですから、モコモコしているから暖かいのだというのはいうまでもないのですが、ビバンダムのようなモコモコはどうしてもカジュアルかつ子供っぽくなりがちで、着こなしの幅を、とりわけ大人のそれを、大きく制限します。
これをミニマムに、かつ暖かさをマックスにしつつ、すっきりしたデザインのものを。
2 丈(たけ)感
多くのダウンはショート丈ですが、その一番のネックはオンで使えない、すなわちジャケットの上に着られないことです。上着の裾からジャケットが覗くほど間抜けなことはありません。
オンオフ着るために、ショートではなくミドル丈のものを。
3 フード
そしてフードのないものを。
ダウンジャケットのフードというものは寒冷地で作業をする人以外は基本的に飾りです。
私はシンプルミニマムな方がいいのと、やはりフードは何かカワイイもの、子供染みたもののように思えて、ないものにこだわりました。これは好みの問題でしょうね。ダウンにフードはデザインの一部、それがないなんて!と感じる方もいることでしょう。
事実多くのダウンジャケットはフードが付き物なので、この点、選択肢が狭まるわけですが、悩みがちな自分には、むしろ悩む要素が減って良かったというのが印象です。
MooRERの”MORRIS"について
かくして、私の大人ダウン問題は最終的に MooRERの”MORRIS"で解決することになりました。
MORRISの特徴
私はファッションバカでもショップの人でもありませんので素人的に述べますと、MooRERというイタリアのブランドは、こと高級ダウンジャケットに関しては、MONCLER(モンクレール)かHerno(ヘルノ)かDUVETICA(デュベティカ)かこちらMooRERかという存在と言われています。
ダウンジャケットだけで無茶苦茶多くのモデルを擁している力の入れようなのですが、ショート丈のSIROというモデルがとりわけヒットしているようです。
MORRISというのは、このSIROをミドル丈にしたモデルで、ダウンジャケットの特徴であるキルティングが縦に仕立てられていること、ボタンがダブル(2列に並んでいる)ということ、絞られたシェイプというのが大きな特徴でしょうか。
私が購入したのがこちらです。色はグレーベージュ。超絶スタイリッシュです。
以下、私がダウンに求めていたものに対する評価の意味も込めそのインプレッションを述べたいと思います。
結論として不満はないので、基本いいところと、サイズ感についてです。
スタイリッシュ&ラグジュアリー
何しろシェイプがいい。
さすがイタリア。デザインに妥協がないですなぁ。絶妙なカーブで身体にフィットします。
ダウンジャケットのようなものは基本的に既製品を買うしかなく、身体の方から合わせに行くものであるところ、私は細長い体型なので既製品がなかなか似合わないと感じることが多かったのですけど、これは良い。
色も悩み抜き、しかも現物を見ることなくポチったので心配でしたが大満足。
光の当たり具合で表情が変わり、まさに大人の発色という感です。
シルバーのようにもグレーのようにも。ベージュという感じではないかもしれません。
なお細かいけれども重要なこととして、MooRERの良いところは見えるところにブランドロゴがない(よく見ればあるけれど、これ見よがしではない)ことです。
およそ大人の装いで、ブランドロゴや文字ほど全てをぶち壊すものはありますまい。こういった姿勢も実に好感がもてます。
頼もしい暖かさ
機能面も完璧です。
タイト気味ゆえ気になるところではありましたが杞憂でした。まだ氷点下を経験していないものの、それでも一桁台の寒さで着ていますが、暖かい!
とくに、やっぱり尻がちょうど隠れる丈なのが、防寒の面でありがたみを感じる日々です。
この点でもミドル丈のお得感が最大化されると言うものです。
首周りは気持ちのいいラビットファーでマフラー要らず。この大きさもいい。着脱可能です。
ちなみにムーレーにはこのような対応気温チャートがついています。
この点はよく検証せずに買いましたが、このモデルはマイナス12度まで「快適」と言う表示です。そら暖かいわけですね。
サイズ感について
私は180センチ細長体型。選んだサイズは48です。
ムーレーは試着をしたことがあるので適正サイズはこれだなという確信がありましたが、ジャストフィット。
腕を下ろすと親指の第二関節に触れ曲げると時計がスッと見える感じです。
ちなみに袖口にリブなどがないのも個人的には好みです。締め付けられる(そのぶん暖かいのでしょうけど)のと、ヘタってくると物哀しくなるので・・
ジャケットの上から着ても窮屈ではなく、ファスナーを全部無理なく閉められ、それでいてルーズなところがありません。優しく包まれる感じで実に気持ちがいいです。
個人的には、よほど痩せてない限り180前後の人なら48、タイト気味ゆえ同じ身長で太ってたら50だろうなという感触です。
まとめ
私にとって大人のダウンジャケット問題は非常に長い間頭を悩ましたものでした。
一生モノだからといって散財をすること自体はいいけれども、時計や靴と違って、流行り廃りや年相応でなければならないといった要素があり、かつスーツのようなセオリーもない代物だけに、結果として「一生モノ」として機能せず、結果としてただ高い買い物をするというのは怖い。
しかしとうとう、長旅の果てに一生着られそうな一生モノを得た思いです。
本格的な冬が楽しみです。
ビジネスシーンにおけるメンズリュックサック問題について
はじめに
こんにちは。
コロナの感染拡大はなかなか予断を許さない状況が続きます。
昨日7月15日は小池百合子都知事の誕生日だそうですが、その日に記者会見を行い、都の警戒度を最高レベルに引き上げました。
一方で官房長官は市中感染は広まっていないなどと安全宣言みたいなことを言ったりカオスなのですが、ともあれ都民に対しては都外への不要不急の外出を控えるよう要請が出されました。
「不要不急がそもそもよくわからない」という声も多いのですが、ざっくりいうと遊びいくとか観光旅行はダメだけど仕事や病院、スーパーにいくのはOKというようなことです。
すでにwithコロナが始まっている様相の東京と、県外ナンバーの車にさえピクッとする我が田舎とではおよそ価値観の共有などできそうにないのですが、いずれにしましても是非都民の皆様にはしばらくおとなしくしていていただくのがお互いの幸せのように思えます。
さて、通勤といえば、本日のテーマはリュックとりわけビジネスシーンにおけるそれについてであります。
本駄文に迷い込むぐらいの紳士淑女の皆様にはそれが少なくとも正統派の装いでないことはもちろんお分かりでしょう。のみならず白ソックス級のタブーとみなす諸兄もおいでのことでしょう。リュックとはそういうものです。
結論から言うと万能ではないけれども全てがダメではなく汎用性高く使えるものもありますということになります。
本稿では、私がそのリュックに出会うまでの葛藤と感動について述べたいと思います。
リュックはなぜビジネスシーンで使えないか
ところでリュックはなぜ「ビジネスシーンでは使えない」のでしょう。
リュックほど機能的なものはないのになぜ機能性が追求されるビジネスシーンでは使えないのか。
カントリージェントルマンを自認する私の結論は、およそスーツを着るようなビジネスの場では、装いには機能性を追求しつつも機能美を保たねばならぬ鉄のルールが存在するためであるというものです。
機能性を追求するならばスーツはボタンではなくファスナーの方が楽だしひっかけて紛失することもありません。なぜそんなスーツは存在しないのか。ネクタイだって機能性ゼロです。ああ仕事かと思いながら締め、終わったヒャッホーと緩めるような代物を何故身につけるのか。省エネスーツはなぜ定着しなかったのか。
こうしたことを考えると、このことはよく理解できると思います。
機能性を保ちつつ、そこには余計なもの、装飾としてのものがあってビジネスシーンに相応しい装いが完成するのです。
そこに行くとあまりにリュックは機能性に寄りすぎ、寄りすぎて機能美を損ない、横着な印象を与えてしまうのです。
もう一つ、スーツやジャケットを傷めるという大きな理由もあります。
荷物の重さを両肩で直接支えるリュックは、身体には優しいけれどもスーツにはすこぶる悪い。生地を傷めると同時に、形崩れを起こします。
ビジネスシーンにおいて身につけるものは手入れがされていなければならないというのも真理で、肩がテカって形が崩れたスーツなどはもう最悪と言うべきでしょう。
使えるリュックとは何か
ではやっぱりリュックは無理ではないかと言うことになるわけです。
基本的には、難しい代物です。
しかし、ビジネスシーンに求められる「相応しい装い」の変化や、電車に乗れなくなって徒歩や自転車で通勤するようになったなど、今や時代がリュックを求めていると思います。
(自転車などは否応なしにリュックですね)
個人的にも、自転車通勤の必要性がリュックという禁断の果実に手を出した理由でした。
それではどういったリュックが許されるのか。私の逡巡と結論を以下に述べます。
(1)ロゴがない
基本中の基本であることは言うまでありますまい。ビジネスシーン云々の前に企業ロゴを身に纏わねばならぬ意味が不明ですが、大人の装いには無縁なものでしょう。
(2)素材
スーツスタイルと親和性があるものを選ぶべきです。リュックはもともと素材の種類が豊富ですが、丈夫であれば良いと言うものではなく、かつあまりチープなものは避けるべきです。
すなわち高級感があり、光沢の抑えられたものが良いでしょう。
ここは、プラダやフェリージに代表される高級ナイロン素材や、TUMIによって市民権を得た超強度ナイロン素材「バリスティックナイロン」が参考になるでしょう。
(3)機能と機能美
手を出すこと自体なかなかに禁断の果実臭の漂うリュックですが、この両者のバランスの追求は絶えず続けるべきものです。
リュックにありがちなポケットの多さや、重さを腰で支えるウェストベルト、背中に接する部分の蒸れを軽減するメッシュ素材の採用・・これらはアウトドアシーンでこそ必須、もちろん人の目さえ気にしなければその快適さに身を委ねたいものですが、グッと堪えて削ぎ落とす必要があります。
また経験上大事なのが肩紐で、両手が使える快適性が売りのはずが、あまりに肩紐が細いと、ーそれはシックな印象を与えるものではあるけれどもー肩が痛くてそれどころではありません。ブリーフケースと同じ重さであっても、です。
初めてリュックを背負うと、案外重たいものを片手で持っていたものだな、と思うものです。重さを肩全体で支えるようなしっかりした肩紐のものを選ぶ必要があることは強調したいと思います。
結論
最終的に、それらを全て満たすものはこのDSPCHしかないのでした。(個人の見解です)
(本稿の画像は公式サイトから拝借しました。)
ビジネス対応を謳うリュックは近年増えてきていますが、多くは一長一短があり、チープすぎたり主張が強かったりアウトドア感が抜けなかったりするものです。
しかしこのサンフランシスコ生まれのバリスティックナイロンリュックは見事にビジネスシーンにマッチします。
田舎在住ゆえ現物に接する機会がなく、通販サイトで見た目買いしたのですが、想像以上の逸品です。最後に、その使用感をまとめてご紹介します。
いいところ①機能と機能美がちょうどいい塩梅
ご覧いただくと分かる通り、実は結構肩ベルトがしっかりしています。いいところ②汎用性が高い
仕事メインで使うわけですが、仕事以外でも使えます。これは当然のことではありません。オンオフ兼用というのはこれまた横着か、TPOに応じたものを持ってない人と思われてしまいます。
オンでもオフでもというチープなセールス用の常套句を拝借するのは気が引けますが、こいつには使っても良いでしょう。まず旅行はこれ一つでまず大丈夫。ノートPCも(今では標準なのでしょう)保護してくれるし、かさばりがちな子供の身の回り品などもガシガシ詰められます。
それでいて職場に置いていても公園の芝生あたりに放り投げておいてもビーチを歩いていても違和感がない。素材とデザインの重要性を感じる逸品です。
いいところ③
価格が良心的です。バリスティックナイロンでこの作り込みにしてこの価格。超絶お買い得だと思います。
TUMIだったら倍ぐらいしそうです。そのうち高くなるんだろうなという悪い予感は大抵当たります。今の世の中ですから、潰れるか高くなるかですね。(多分)
DSPTCH ディパッチ デイパック
ブルックスブラザーズの破産に思う
アメリカの紳士服ブランド「ブルックス・ブラザーズ」がコロナ破産とのニュースが飛び込んできました。
ブルックス・ブラザーズと言えばアメリカン・トラディショナルの雄。創業200年を超えるアメリカでも最も歴史のある紳士服店です。
歴代大統領のスーツを仕立ててきたことでもよく知られ、軽くwikiったらケネディ大統領が暗殺されたときに着ていたのも同社のスーツだったそうです。
報道によると、コロナパンデミックの影響を受け、今日までにすでにいくつかの店舗は閉鎖しており、アメリカ国内の工場も閉鎖に向けた準備を進めていたとのこと。パンデミック前にも、ファストファッションの浸透やオンラインでの競争の中で苦戦していたようで、さもありなんという気がします。
たしかに近年あまり名前を聞くこともなくなったというか、アメトラ自体がそもそも過去の遺物というか(個人の見解です)、少なくとも絶好調ではなかったというのは間違いないと思いますが、人生折り返し・団塊ジュニアど真ん中の私にとってそれは、ある種のノスタルジックを感じる存在なのです。
ブルックス・ブラザーズの代名詞はオックスフォード生地のボタンダウンシャツ。
なにしろボタンダウンシャツを初めて世に送り出したのが同社です。
社会人生活を始めた20数年前、給料日前には絶食するような生活のくせに、おそらくはアメリカへの無知なあこがれから、決して安くはないここのシャツを何着も買ったものです。
オックスフォード生地のボタンダウンシャツ、少々野暮ったいです。胸ポッケに羊の刺繍もないだろと思います。
しかしそんなシャツををスーツスタイルでも(むしろそっちで)好んで着ていました。だいたい、そもそもここの服は身幅が広く(イタリアンやブリティッシュと比較して、それがアメリカンの特徴とざっくり理解されていました)、細身の自分には全然似合っていなかったと思うのですが。
ともあれ、そんな苦笑いとセットの思い出とともに、若かった時代の、そして今にして思えば、アメリカなる概念がまだ大いに若者を、世界を惹きつけていた時代の、遠くなりゆく記憶となって小生の胸の奥底をちくりちくりと刺すような気がする、そんな存在なのです。
(公式Twitterより)
もっとも、私自身は、寂しさのようなものは覚えるけれども、それだけで、別に困りはしません。
私はいわば流行りに乗ってここのシャツを買っていたに過ぎません。
「それはかっこいいから、いいものだから流行ったのだろう」
との反論もありましょうが、だいたい人の体は100人いれば100通りなのに、ここの服がいちばんかっこいいなんてことがあるわけない。
いいもの、に関しては素材だの縫製だのあるでしょうが、所詮マシンメイドの大量生産です。
別に若気の至り、ジェントルマンの黒歴史の片棒を担いだからと言ってdisられる筋合いはないでしょう、ゴールデンフリースさんも大メーワクだと思いますが、言ってしまえばファストフッションと比べられ、負けたのです。そういうことです。
ゴールデンフリース(公式サイトより)
もちろん、大統領が既製品を着るわけないし、セレブもしかり。そうしたオーダー品は一流の職人さんやらデザイナーが関わるのでしょうから、それはかっこよく、いいものには違いありません。
しかし、そのブランドだからといって店舗の吊るしに一般人がありがたがって高い金を払うのですから滑稽な話です。
吊るしを買う限り、ファストファッションとこうしたブランドとの差はない、控えめに言っても価格差に見合うだけのものはないというのが大体において当てはまり、多くの人がそこに気づいたというのが正しいのじゃないでしょうか。
よって、コロナ倒産と言うけれども、遅かれ早かれその時は来たのだというのが妥当と考えられるのです。
それじゃファストファッションしか残らないかといえば、さにあらず。
かっこいいもの、いいものとは結局似合っているもの。こと大人の装いにおいては身体に合っているものでしょう。
行き着くところは、オーダーしかないと思います。
「オーダーって高いじゃん」という偏見は恐るべきことにまだ根強いのですが、例えばシャツならブルックス・ブラザーズを一枚買う値段で1.5〜2枚作ることができます。
はっきり言ってシャツやスーツに関していえば吊るしが奇跡的に会う人を除いてオーダーすべきです。
似合わない20万円の吊るしのスーツより5万円のオーダー。3万円の既製品のシャツより5千円のオーダーです。断言できます。
素材は二の次で、まずは身体に合っているかが全てなのです。もちろん、金が許す限り素材にはこだわることができるのですから。
危機は淘汰を促し、真に人と時代に求められるものが残っていくことになるのでしょう。
ただ、かっこいい、いいものを身につけたいという欲求はなくならないと思います。
今回の、一時代を築いたファッションのアイコンの終焉は、では、いいものとはなんなのか?を雑誌や雰囲気ではなく、自分の頭で考え、選ぶということが大事で、それは簡単なのだということを改めて気づかせてくれたように思います。
レッツオーダー。
コロナと共に生きるってこと
はじめに
世の中がほんのここ1、2ヶ月の間に劇的に変化して、この駄文を書いている最中にも情勢は刻々と変化しています。
もちろん、ネタは尽きないとは言え、本稿はコロナの感染拡大のための専門的な知見の披瀝や、意識の高い行動変容のお誘いを目的としているものではありません。
そんなもの持ち合わせていないし、実際のところ何しろ新型のウィルスでわかっていない事が多いので、何が正しいのかわかったもんじゃないですからね。素人がうかつに聞きかじりの知識を晒すが如き愚は慎まねばなりません。
絶対間違いないのは、「一番効果があるのは手洗いだ」くらいのもんじゃないでしょうか。
とにかく、世の中とりわけ一般市民に対しては、手を洗う、他人に近づかない、一番安全なのは家の中。を基本とする啓発が盛んにおこわなれているというわけです。
しかしですよ。(ここから本題です)
ここは田舎、しかも超田舎です。
もちろんこんな時でも沖縄に飛びパチンコ屋に行列をなす輩のように「自分だけは大丈夫」などとは思いません。手、洗ってます。
しかし、全国一律の規制というものにはやはり違和感を持つのであります。
密集 100km圏内にはないです。列車であってさえも。
密接 家族以外に考えられないです。職場であってさえも。
密閉 寝室以外にそんな空間ないです。
マジなんです。日本にはそんなところもあるんです。
それなのに、同じレベルでの行動変容を求められている、それが今なんです!
そして、裏が山で目の前が海、畑仕事もたまってるくせに #お家で過ごそう とか言って腕立て伏せ動画をSNSに載せてドヤ顔しているのが今の地方民なのです。何とも寒々しい。
田舎なんだから働かざる者食うべからず。田舎なんだから近くの山に登って海でサーフィンに興じればいい!
そこで今回は、今こそ引っ張り出したいアウトドアグッズのインプレッションでもしてみようかなと思った次第です(そこかよ)。
今こそ引っ張り出したいアウトドアグッズ
本当に家の中にいるしかない都会の人は本当に気の毒でお見舞い申し上げます・・
ですが、事情が許す人は、ぜひ外に出たいところです。河川敷でも、庭でもベランダでも、太陽があるとないとでは大違いですからね。
そこで今回、私物の中からオススメ屋外グッズを3つほど厳選してみました。
いずれもアフターコロナでも使える無駄のないものばかりを選びましたので、ご参考くださいませ。
1 パラブーツのアヴォリアーズ
いわゆる登山靴ですがそこはさすがパラブーツ。
パラブーツについてご興味があれば過去記事もご笑覧ください。
さすがパラブーツと感じるのは、登山靴としての信頼性と、タウンユースできるスタイリッシュさを併せ持っているところです。
どちらかに偏りすぎてもお買い得感は大きく損なわれると言えましょう。
すなわち本格登山をやろうという人はあえてこのクラシックなタイプのオールレザーの登山靴を買わずとも、近年ではより高性能のものが溢れています。
また、クラシックな登山靴というのは、街で履こうとするには野暮ったいもの。
ところがこのアヴォリアーズは、その両方を絶妙なバランスで両立させています。
具体的にいうと、軽登山であってもおよそ登山と称するアクティビティでは、足首を保護し、滑らないことが求められるところ、十分にその要求を果たします。
特筆すべきはグリップ性。ありがちなのがグリップ性に優れたコマンドソールなんだけどゴムが硬くて結局滑る。みたいな失敗ですが、適度な柔らかさも相まって非常に疲れにくい。
また、登山靴としてはずいぶん細身です。これは一説にはスキーを装着する必要性からと聞きましたが、結果としてタウンユースに無理なくマッチするフォルムが生まれたと言えそうです。
2 グレゴリーのリュック
リュックだけはグレゴリーにしとけば間違いない。このことに異論を唱える人はおそらくいないでしょう。
本格的な登山はもちろん、ちょっとしたハイキングなどでも、ある程度の時間を荷物を背負って歩くという時に、身体にフィットせず肩に不快に食い込むリュックがいかに疲労を募らせ登山を苦行に変えるものであるかは計りしれません。
グレゴリーのリュックは、とにかくフィット感に優れ、荷物の重さを感じさせない作りが秀逸です。
最近新調したのですが、フィット感はもちろん、あちこちに収納があってよろしい。
とにかく近年は荷物(小物)が多くなりがち(スマホとかバッテリーとかですね)ですが、そういったものをうまく収納できるように研究がされているのだなぁと感じます。
ちなみに私は斜めがけのバックなどは肩がすぐ痛くなるガラスの肩の持ち主。できれば通勤もグレゴリーのリュックで行きたいところですがさすがにスーツには合いませんので我慢しています。
3 スノーピークの食器
登山用品のいいところは軽量コンパクトであることです。
本格登山になればなるほど、一つ一つの重さやリュックの中に占めるスペースが死活問題になるからですね。
こちらは自ら「お家でスノーピーク」とか言ってる会社の製品ですから登山というよりキャンプ用品ですが、コンパクトに収納できるというところを追求するアウトドアの思想を感じます。
ちなみに私は田舎に単身赴任をしているのですが、この食器で自炊からアウトドアまで済ませます。
家でも、外でも、山でも、谷でも、田村でもスノーピーク。
こちらは家族用ですが個人用もあります。
スノーピーク社の製品には、コンプリートしたくなる統一感がありますね。
こちらも使い倒しているマグカップ。取手が胴部分に沿うように動き、場所をとりません
おまけ。他社製品ですがフライパン。取手がこれまたこのように曲がります。しかも振ってもガタつくこともない。
少々脱線しましたが、ここ数日はコロナもひと段落といった風ではあるものの、人々には新たな行動変容というものが求められており、「飲み会は横一列で」などギャグかと思いましたが真面目に受け入れようとする向きもあるようで、いずれにせよ数ヶ月前とこの先とでは人々の行動のありようは大きく変わるようです。
しかし不便になった、人付き合いが希薄になったと嘆くのも、共存するほかないことを悟る段階となったウィルスを過度に恐れて暮らすのももったいない話です。
今こそ自然に帰るときといえば大袈裟ですが、お日様のあるところに出かけて時を過ごすことの幸せを再発見するのはいいことだと思います。
そんな大移動をしなくても、いくら東京でも、日の当たらないところだけでもありますまい。
みんなで外に出てコロナさんとうまく折り合いをつけて世知辛い世の中を面白く生きようではありませんか。
Barbourを着て1年が経ちましたが
記録的な暖冬とは言え冬は冬。日毎に寒さが募ります。
そんな中、ふと「そういえばBarbour買ったのは去年であったか」ということに気づき、ここらでレビューのひとつでも書いてみようかと思った次第です。
Barbour"BEDALE"ーそれはそれはメインで使い倒しているわけですが、メンテナンスや着こなしの注意点など、思っていたものとやや違う(いい意味と悪い意味で)ところもあり、購入を悩んでいる諸兄には参考になることも多少はあるかもしれぬと思ったからです。
もうショーウィンドウには春物も並ぼうかという今日この頃ですがしばしお付き合いください。
私のBarbourに関するファーストインプレッションについてご興味の向きはこちらをご覧くださいませ。
では、いよいよ一年経過しての感想です。
着こなしについて
「くずし」のためのアイテムとして
はじめに、購入前に私が考えたのがスーツやジャケットなどビジネスシーンにおける活用でした。
まさにこんなイメージがあったからですね。
(otokomaeken.com)
はなから邪道と言われれば身も蓋もないわけですが、堅苦しくならず軽妙にして滲み出る伊達男感。たまりません。
しかし、これを実践するときに注意しなければならないなと実感したのが、こうしたお洒落な感じを出すためには、スーツスタイルに妥協をしてはいけないということです。
すなわち、Barbourはもともとアウトドアの服。言ったら肉体労働者、ゴリゴリのブルーカラーの服です。
あえてくずしてるんだよ、というためには、身体にフィットしたスーツをパリッと着て、シックなネクタイをきちんと締めてスーツスタイルを完成させてからでないと、そのBarbourの野暮ったさの方が勝ち、「コートがない人」「農家の人がお呼ばれされた」感が演出されてしまうのです。
くずしてるのじゃじゃなく、崩されてしまうわけですね。
こうなるとイ○ンなどのよくわからないコートを羽織ってる方がマシかもしれません。
その意味から、どちらかと言えばジャケットではなく、キメやすいスーツスタイルの方が雰囲気を出しやすいと思います。
また、あくまで遊びですから、スーツスタイルで毎日使うが如きはやはり避けた方がよいというのも感じます。
「お洒落な普段着」として
もちろん普段着から屋外の仕事、犬の散歩までオールマイティに使えそうだ、ということも購入の決め手であったわけです。
こちらについては想像以上に非常に使いやすい服です。
ジーンズにこれさえ羽織っときゃとりあえず外に出られる格好の出来上がり。合わせる服を選ばない汎用性。どんな格好をしようともこれ一着で雰囲気あるブリティッシュ•スタイルにまとめてくれ、休日のお父さんもただのお父さんじゃなくなります。
それでも、やはりどちらかというとキレイめの服の上に羽織った方が良さそうです。
スーツやジャケットと違い普段着ですから何に着ようが自由なわけですが、この服の野暮ったさの破壊力は侮れません。
作業着や犬の散歩、コンビニまでならまあいいとして、いわゆるお出かけの際は努めてインナーはキレイめを心がけなければならぬようです。
特にもワタクシ地方在住。田園風景や漁村の風景に意図せず溶け込んでしまいます。
(kuramotoso.jp)
油断するとフラノコレクションに。写真は黒板吾郎モデル。
メンテナンスについて
これについては、この服が「オイルドジャケット」という、防風や防水のために生地にオイルを塗り込んであるものであるがゆえ、巷では
- 専用のオイルを自分で塗り込む必要がある
- 車のシートにオイルがつく
- クローゼット内では隔離する必要がある
- 匂いがきつい
- 満員電車で着るのはマナー違反
など、様々な噂が飛び交っており、私も大いに悩んだものです。
しかし、どれも気にする必要はほとんどない、というのが実感です。
もっとも、オイルメンテは必要(機能のみならず独特の風合いの維持のため)でしょうが、ショップの人によると3年はノーメンテで大丈夫とのこと。
もちろん何もしてません。
また、これまたネットでは「熱湯をかけて古いオイルを落とす」だの、「段ボール箱の中でドライヤーを当てる」だのクッソめんどくさそうなメンテ法が紹介されていますが、面倒ならショップに頼めばいいのです。
また、車のシートも全く気にせず使えます。
白の革に長時間とか、その辺りは検証してませんが、触れただけでオイルが付くなんてことはないのです。
匂いもほぼ無臭。強いて言えば服屋の匂いです。塗りたてはまた違うのでしょうか?
なお、この冬を迎える前の保管ですが、念のため裏返しにして他の衣服と一緒に吊るしていました。
それほど扱いの面倒なものではありませんね。
総評
以上のように、
- オンオフ活躍するものの羽織る前の装いに気遣いを怠らぬこと
- オイルは恐るに足らぬこと
がまとめとなるでしょうか。
まだ2年目、永く着て経年変化を楽しむものだとも言われており、もちろん廃れることのないスタイルの服ですから、言われるまでもなく多分死ぬまで着るでしょう。
さてBarbourについての駄文でネットの片隅を汚すことになる本日は、奇しくもBarbourを生んだイギリスがEUを脱退した歴史的な日と重なりました。
少なくともファッションに関しては「ブリティッシュ・スタイル」という世界のスタンダードを生んだ国。
私は言うに及ばず、およそ大人の装いに関心を持つ者で彼の国に憧れを抱かぬものはないでしょう。
カウントダウンで離脱を喜ぶ英国人のメンタルは計り知れませんが、人々の暮らしとブリティッシュ・スタイルを担う職人やファクトリーに幸多からんことを願いつつ、投稿ボタンを押します。カチッ。
サイズ感についてはよろしければこちらもどうぞ
ビジネスシーンにおけるスニーカー考
酷暑もひと段落どころかもう秋まっしぐらの感も漂う今日この頃です。
そんな本日は「男の装い」に関する一考察、「ビジネスシーンにおけるスニーカー」についてです。
とにかくこの話題については「すでにスニーカーはビジネスの場でも確固たる地位を得た」というものから「運動靴ふぜいがフォーマルを語るな」というものまでさまざまな受け止め方があるものと言ってよいでしょう。
私はと言えば若い時分から「運動靴ふぜいが」派に近しい立場であった気がしますが、下手なこだわりを捨てて取り入れてみたところ存外にこれを気に入った次第ですので、そのいきさつについて書き留めておこうという気になったわけです。
おそらくこの駄文にたどり着いた諸兄の中には同じような葛藤を抱いておられる向きもあるでしょうから、何かの足しになれば幸いです
今更スニーカーを取り入れた経緯について
今やよほどかっちりした服装が求められる職種以外では「職場でスニーカー」を履いている人を見るのはめずらしくなくなりました。
しかし貧乏学生の頃から英国靴に魅せられ、給料が10万円代にもかかわらずコナカの吊るしのスーツにクロケット&ジョーンズのストレートチップを履いて社会人生活をスタートした自分には、スニーカーはまさしく運動靴。
紳士の装いとは縁遠いもの、運動靴を履いて職場に来て、あまつさえ職場に着いたらサンダルに履き替えるがごとき輩は紳士にあらずは言うに及ばず、社会人の風上にも置けぬ奴と唾棄したものであります。
しかしそんな自分がいかなる変節で運動靴を履いて通勤するに至ったか。
結論から言うと、仕事の装いに対する考え方が柔軟になったとの、タイミングを同じくしてビジネスシーンに合うスニーカーに出会ったから、ということではないかと思います。
すなわち、サンダル履きの先輩を軽蔑し唾棄しつつ、「夏でも俺はジャケットを脱がないぜ」といったこだわりが、この酷暑も相まっていわばアホらしくなった。それはTPOを逆にわきまえていないような気がしてきたとでも言いますか。
しからば夏は足元も軽快に、もちろんビジネスシーンであることを十分に踏まえたうえでとなると、どんな靴を履くべきか。
2 ビジネスシーンに合うスニーカーについて
スニーカーを履かない大きな理由の一つに、
「どうしてスニーカーはメーカーが一目でわかるようなデザインなのだろうか」
というのがありました。
そして、メーカーが一目でわかるようなデザインというのは、イコールビジネスシーンに求められる、過度な主張をしない、落ち着いたたたずまい、すなわちシックさを損なうものでありますから、おのずとスニーカーは縁遠いものとなるわけです。
また、スニーカーはカジュアル靴・運動靴ですから、どうしてもシルエットにオフ感が余分に滲み出るため、足元だけ浮いてしまう現象が起きます。
しかしこの靴
patrick “punch”
に出会ってしまったのです。
写真だとなんだか高級なスタンスミス↑みたいですが、
履いてみるとその差は歴然。
細身でロングノーズのためスラックスに合います。小学校の先生のそれのように、足元だけ浮く感じがありませんね。
あと、履かなければ分かりませんが革が非常に柔らかく、軽い。これは癖になる履き心地です。
※私のモデルはシュリンクレザーの別注で、より柔らかいです(自慢)。
とにかくスタンスミスとは別物です。顔も書いてませんしね。
スタンスミス氏(wikipediaより)
少し逸れましたが、シックさを損なわず、それでいて軽快に夏のビジネスシーンに用いることができるスニーカーにめぐりあったことによって、私の「ビジネスシーンにおけるスニーカー観」ときたら
「運動靴ふぜいが」
から
「なんで今まで履かなかったんだろうか」
にまで手のひらが180度ひっくり返った次第なのです。
ウォータープルーフモデルもあります。
試着しましたが、雨に強いという点よりも、光沢があってよりビジネスシーンに合いそうというメリットを感じました。ロングノーズも強調されています。
スニーカーの限界について(蛇足)
散々ビジネスシーンにおけるスニーカーを礼賛してきたわけですが、当然ですが万能選手ではありません。
ビジネスシーンにおけるスニーカーには自ずと限界があります。
まず、ジャケットスタイルまではいけても流石にスーツスタイルには厳しい。
(別にスニーカーさんはドレスシューズに取って代わろうとは思ってないと思うので、以下は勝手な妄言です)
スニーカーはスーツスタイルで厳しい。そこは越えられない壁がある。
最後に、これはなぜなのか?を自分なりに考察してみたいと思います。
役割が違うからだと言ってしまったら身もふたもないので、少し角度を変えてみましょう。
それは、スーツスタイルに求められ、それでいてスニーカーにはないものとは何かを探ることであります。
機能美かというとそれは的を射ていないかもしれません。スニーカーは運動靴ですがドレスシューズとてルーツはアウトドアです。同じく革の紐靴と考えると、なんなら機能的にはスニーカーの方が優れていそうです。
私としては「消耗品か否か」に1つの答えがあるように思います。
やはりスーツスタイルに合う靴はメンテナンスをして長く履くものであり、手入れの行き届いた古い靴によって男の装いが完成するようなところがあります。
そこにいくとスニーカーはそもそも長い間履くものとして設計されていません。わかりやすい違いとして、ソール交換ができません。つまり究極的には使い捨てです。
(Patrickの一部モデルはソール交換ができますが、その他の部分が持つか、交換がきくのかと考えるとせいぜい1回でしょう。)
スーツスタイルは、そうした「使い捨て」のようなものを身につけることを許さない暗黙のルールがあると思います。
これにより、どんなに細身でロングノーズで高級な素材を使ったとしても、スーツスタイルのワードローブには加わることはできないと思われるのです。
繰り返しになりますが、別にスニーカーはドレスシューズに寄せてるわけでも取って代わろうとしているわけでもありますまい。
勝手に履いといて余計なお世話かと思います。
しかしこうした限界ーすなわち男の装いにおけるルールに結びつくーを意識しながら、うまくこの快適でお洒落なアイテムと付き合っていきたいと思うのであります。
20年履いて決着、J.Mウェストン「ゴルフ」vsパラブーツ「シャンボード」
本日は革靴のスタイルのひとつ「Uチップ」のお話。
その中でも絶えず比較され続けるフランスの両雄、J.Mウェストンの「ゴルフ」とパラブーツの「シャンボード」について掘り下げてみたいと思います。
そして、「ゴルフvsシャンボード」という、私が知る限り少なくとも20年は靴好きのネタにされている永遠のテーマについて、私なりの答えを導きたいと思っております。
お付き合いください。
Uチップという存在
Uチップとは、革靴の甲の部分の飾り革がU字型にモカシン縫いされた革靴です。
それは紳士靴の定番にして、「ドレス過ぎず外し過ぎず」の絶妙のバランスにより高い汎用性を持つ稀有な存在。
カジュアルでいて洒脱な雰囲気を併せ持ち、どんな格好をしようとも上質のUチップさえ履いておけばそこそこ洗練されたスタイルに高めてくれます。
Uチップの代表作
各メーカーで特色あるモデルを作っていますが、Uチップとはずいぶんお国柄が出る靴のようです。
フランスのUチップ
まずは本記事で取り上げるフランスのUチップ。
ルーツは「狩猟用の靴」だそうです。
ガチガチのアウトドアですね。
撃たれたい(画像はイメージです)
代表作は言わずと知れた「ゴルフ」と「シャンボード」。
フランスのUチップは、つま先が丸い(尖ってない)ので、イギリスのUチップと比べると「まさにU」という感じがします。
また、尖っていないことが、服装を選ばないというところにつながっており、こういうところにフランスのセンス、美意識を見る思いがします。
イギリスのUチップ
カントリーシューズがルーツです。つまり、フランス同様にアウトドアの「働く靴」から進化しているのですね。
代表作はエドワード・グリーンの「ドーヴァー」やクロケット&ジョーンズの「モールトン」。
クロケット&ジョーンズの「モールトン」
つま先は軽く尖っていて、シャープな印象を受けます。ドレス寄りと言えるでしょう。
アメリカのUチップ
ルーツはゴルフシューズ。こちらはアウトドアのスポーツです。
スポーツとしてのゴルフの発祥は英国、靴が発展したのがアメリカ、「ゴルフ」の名を冠する世界一有名な靴はフランス。ややこしいです。
代表作、と言っていいのか不明ですがオールデンのコードバンのUチップがあまりにも有名です。
オールデンのコードバンのUチップ
見た目よりボリュームがあります。主張する素材・・どちらかというとカジュアルですね。
ゴルフとシャンボードの比較
それではいよいよゴルフとシャンボードの比較です。
製法と素材
まず製法です。
ゴルフ、シャンボードとも堅牢性の高い靴ですが、ゴルフが本格靴の定番、グッドイヤー・ウェルテッド製法を採用しているのに対し、シャンボードがノルヴェイジャン製法。
これは登山靴などに用いられてきた製法で、パラブーツのお家芸ともいえる製法です。
防水性と堅牢性に優れる一方、厚い靴底に加え、靴底とアッパーの間の空間に太いステッチが覗くという形状のため、どうしてもカジュアルな印象が出ます。
主張の激しいステッチ。パラブーツ
素材はいずれも油分を多く含んだ厚い革が使われますが、革もそれぞれ独自の製法です。
ゴルフが「ロシアンカーフ」パラブーツは「リスレザー」と呼ばれています。
近年ゴルフのロシアンカーフは廃版になり、現行モデルはサイトによると「ソフトカーフ」。どういう素材なのでしょう?
厚さに関してはパラブーツのほうが厚いと感じます。
シェイプ
形について。同じサイズでも印象は大きく異なります。
ゴルフはシャープな印象を受けますが、シャンボードは全体的にボリュームが出ます。
足入れ部分、甲全体ともにシャンボードのほうが高さがあります。
それに加えて、ゴルフのモカ部分が先端寄りにつま先をなぞるように縫われているのに対し、シャンボードのモカ部分は足首のほうに近くなっていて、このことによってシャンボードのボリュームや丸っぽさが強調されているように思います。
履きごこち
どちらがフィットするか?と聞かれたら「ゴルフ」と即答します。
同じサイズ(いずれも71/2)ですが、ゴルフはさすがフィット感に定評のあるモデルだけあって、よく足になじみます。
一方シャンボードは、甲が高い靴であることと、長い間履くにつれ靴底に敷き詰められたコルクがずいぶんと沈むので、そもそもフィットさせるのが難しいと感じます。
汎用性
着こなしにおける汎用性はどうか?ということですが、
- スーツスタイルでもマッチするのはゴルフ。
- ジャケットスタイルになると辛うじてシャンボードも認められる。
- カジュアルならシャンボード。ゴルフも黒以外なら問題ない。
というイメージです。
やはり20年履いて・・・というか年を取って感じるのは、シャンボードはカジュアル用の靴だ。ということです。
若ければ「おしゃれだね」で片付けられる着こなしも、年を取ってくると、スーツ×シャンボードは明らかに「TPOがわからない人」になってしまいます。
シャンボードが、「黒」で「タグがなく」「ステッチが黒い」なら別ですが、、
耐久性
「一生ものというけれど本当か?」
ということです。「使いようによる」といえば身もふたもないのですが、耐久性に関しては断然シャンボードだと思います。
こちらのゴルフ、オールソールをしています。地方ゆえショップに出すということは考えませんでした。ビブラムソールです。
もうゴルフじゃないとすら言えます。実際、オールソールをすると履き心地は別物。だんだん馴染むとは言え直後はあまりの変わりぶりにショックを受けました。
いっぽうシャンボードのほうはゴルフより2,3年古いのですが、オールソールはしていません。減らないのです。
しかしアッパーが限界です。購入したあたりでもうすこしシューケアを知っていれば、問題なくこれからも使えたはずです。
シャンボードの耐久性は驚異的です!
ただ、どちらもきちんとケアすればまさに一生もの。それは実証できたと思います。
その他
オールソールを頼む時、あるいは磨いた靴でショップを訪れる時。
靴に造詣の深い店員さんの態度が変わるのはゴルフです。
一方パラブーツ。何が嫌ってたまに他人とかぶることです。いい靴で価格も手頃という証ですが靴好きとは身勝手なもの。
他人が同じ靴を履いているのは嫌なものですからね。
結論〜ゴルフとパラブーツ、どちらを選ぶべきか
実は、まさに今、シャンボードとゴルフが同時に限界を迎えようとしています。
正確にはまだまだ履けますが写真でお気づきのとおり、傷みが目立つようになってきたのです。
新しいタイプの靴ではなく、同じ靴を買うとしたらどちらを買うだろうか?それを考えたのが本テーマのきっかけでした。
結論を言うとどちらかと言われれば私はゴルフです。
しかしそれは、靴の優劣ではなく、大人ならば、という理由です。
つまり、シャンボードはいい靴で、とにかくタフに使えるのはほかに例を見ないけれども、やはり大人としては仕事には使えない。
また、フィット感に関して、甲が低い私の足にはシャンボードが合わないという事情もあります。
一方、ゴルフはビジネスでも、大人カジュアルでも使えます。茶色系のゴルフさえ持っておけば他がくたびれていても全く問題ないですからね。
おまけにフィットの快適を求めるとこれに勝る靴はそうそうありません。
ちょっと心配なのは、ゴルフはいまもかつてのゴルフなんだろうか?という点です。
何しろ値上がりしました。
ネットでは「素材が変わった」だの、「店員の質が落ちた」だの、不安になる材料も転がっています。
12万円を超える価格に、現行のゴルフは見合っているのでしょうか。
しかし、地方ゆえなかなかこの目で確認することができません。
なんとか近いうちにぜひ実地調査をして見極めるとともに、本記事も追記したいものだと思っています。
2019.3.21追記
南青山のJ.Mウェストンに行ってきました。
念願のマジフィッティングと試着、店員さんとの靴談義を楽しんで参りました。
革については、固い気がしましたが、新品だからなのか製法の違いなのか、私にはわかりませんでした。
結論としてはやっぱり素晴らしい靴だなと思いました。
高いは高いけど革靴みんなそうなってるし、下がることはないのでしょう。
それより、本気で手入れして死ぬまで履ける靴を手に入れたい思いが勝ちました。
店員さんの対応も素晴らしいし買わせに来ないし、何より履いていったゴルフ(10年もの)の紐を無料で替えてくれました…!!
とりあえず、その場はクールダウンしました。が、次行くのは買う時だなと思います。